事例とチャレンジ
カスタマイズで様々な規格、評価へも対応。
液晶パネルの開発スピード、信頼性を向上させるI/Fボードとは。
〜ディスプレイI/Fボード開発〜
2021.05.23

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荒木 武
東日本技術本部 第二技術部 第三設計課 第三係 主任技師
1993年入社。CRTディスプレイや欧州向け液晶テレビなどを開発した後、車載向け機器の開発に従事。現在は車載ディスプレイの開発と並行してIoTデバイスの開発も手掛ける。ディスプレイI/Fボード開発のプロジェクトリーダー
INDEX
POINT
- 15年以上の評価検証で培ったノウハウをもとに開発
- カスタマイズで様々な規格や評価に対応できる汎用性
- 多種多様な投影をボード1つでカバー。省スペース化やコスト削減にも貢献
開発の背景・課題
ディスプレイI/Fボードを一言で表すなら、液晶パネルに様々な画像や信号を表示させることができるボードです。検査治具や信号発生器などのように、同じようなことができる機器はありますが、表示させる画像や信号パターンが限られていたり、細かい検討が難しいという課題がありました。それでも複数の機器を使えば評価は可能ですが、そのためには機器の導入に多大なコストがかかってしまいます。
当社で液晶パネルの開発をすることになった際に、「それならより詳細の検討までできる評価機器を自分たちで開発してしまおう」と、I/Fボードの開発に取り掛かったのがプロジェクトの始まりです。
ソリューション
当社は長年にわたりパナソニック製品のモノづくりに携わっており、評価検証でも15年以上の実績があります。この評価検証で培ったノウハウを詰め込み、開発したのが初代I/Fボードです。このI/Fボードでは、液晶パネルの開発で課題になりそうなあらゆるパターンの検討段階でのテスト、そして対策を可能にしました。
もともと初代I/Fボードは、1つの液晶パネルに特化した評価機器として開発しています。その液晶パネル、I/Fボードが好評だったため、そこから他の液晶製品の引き合いが増えたのですが、その都度で対応した評価機器を開発するのは開発スピード、コスト的にも得策とは言えません。そこで、I/Fボードを他の液晶製品にも対応できるように、つまり汎用性のある新たなI/Fボードへと改良できないかという話しが持ち上がりました。
しかし、液晶製品だけでも対応するべきI/Fや評価項目は非常に多く、全ての規格や項目に対応した機能を恒常的に持たせるには限界があります。そこで、画像や信号を作るベースになる標準ボードと、製品ごとに必要な規格や評価項目によってカスタマイズできるオプションという構造に分けて、I/Fボードを設計し直しました。
これにより誕生したのが、現在のディスプレイI/Fボードです。ディスプレイI/Fボードの特徴は2点あります。
まず1点目は、オプションをカスタマイズするだけで、様々な規格や評価項目に対応できる汎用性があること。次に2点目は、FPGAを活用した疑似制御を行うことで、評価項目に対応した画像や信号の表示を可能にしていること。この2点により、開発スピードや液晶製品の信頼性を飛躍的に向上させました。
現時点でも、お客様のニーズやご要望にあわせて多数のオプションを用意していますが、今後新しい規格が登場した際には、オプションとして開発する可能性もあります※。ディスプレイI/Fボードの導入後に別の規格への対応が必要な際には、オプションだけをカスタマイズすれば良いので、ランニングコストを抑えることも可能でしょう。
※ディスプレイI/Fボードで対応可能な規格 2021年5月28日現在
種類 | 規格 | 該当基板 |
---|---|---|
入力 | HDMI 2系統 | 標準ボード |
DP | オプション | |
USB3.0 | オプション | |
YUV component | オプション | |
RGB Analog | オプション | |
FPD-LINK III | オプション | |
GVIF | オプション | |
出力 | GMSL 4系統 | 標準ボード |
LVDS | オプション | |
V-by-One(V-by-One HS) | オプション | |
MIPI | オプション | |
eDP | オプション | |
内蔵評価用映像パターン | ColorBar | 標準ボード |
White | オプション | |
Black | オプション | |
自然画 | オプション | |
出力解像度 | 1080 30i | 標準ボード |
1080 30p/60p | オプション | |
電源 | DC12V | 標準ボード |
ディスプレイI/Fボードで評価可能な項目例
項目 | 属性 | 詳細 |
---|---|---|
情報量 | 解像度 | 画素数 |
輝細度 | 画素サイズ | |
サイズ | 表示エリア | |
画質 | 表示色 | 表示可能な色数 |
視野角 | 十分なコントラストが取れる水平、垂直方向の角度 | |
輝度、コントラスト | 画面の明るさ、最大/最小輝度 | |
表示階調数 | 駆動可能なグレースケール | |
色純度 | 表示可能な色の広さ | |
応答速度 | 画像の書き換えに必要な時間 | |
表示品位の低下要因 | フリッカ | 画面のちらつき |
残像 | 画像を書き換えたあと画面上に前の像が残る | |
ムラ | 画面上で輝度や色が均一でない部分 |
成果・今後の展望
ディスプレイI/Fボード自体のサイズも小さければ、他に必要になるのは各種測定器だけですので、省スペース化やコスト削減への貢献も期待できます。メーカー企業様の本業は製品の開発ですので、製品の評価までは力を入れられないケースも多いのではないでしょうか。そんな課題を持つ企業様にこそ、このI/Fボードは効果を感じていただけるはずです。
液晶パネルの評価で必要になる、画像や信号を映し出す機能は、ディスプレイI/Fボードひとつで全てカバーできると言っても過言ではありません。実績としても、検討時の液晶パネル単体での評価だけでなく、工場での量産時のアセット・単体での検査にも活用いただいていますので、液晶メーカー様をはじめ、液晶を採用する側の機器メーカー様へも貢献できると考えています。