事例とチャレンジ
評価・検証の自動化で、ヒューマンエラーを取り除きながら、作業効率を格段にアップ。
〜FPGA I/Fボード搭載の「評価・検証自動化ツール」開発〜
2021.05.15
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牧 茂
クラウド・ソリューション技術本部 検証技術部 第一設計課 第三係 主任技師
1989年入社。以降、ホームバスシステム、放送局向けビデオサーバー、車載用レコーダーなど、BtoB製品を中心としたソフトウェア開発に従事。現在は、「評価・検証自動化ツール」を用いたソリューションの提案活動を推進中。
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酒井 明平
クラウド・ソリューション技術本部 検証技術部 第一設計課 第三係
1987年入社。放送局向けVTR、DVDレコーダー、車載用AV機器、デジタルカメラ自動検証ロボットなどのシステム開発に従事した後、現在、「評価・検証自動化ツール」開発プロジェクトではハードウェアまわりを担当。
INDEX
POINT
- 手作業であった評価・検証を自動化し、24時間稼働。品質UPと効率化を同時に推進。
- 複数のツールが1つに。低コストで増版、改版も可能。装置面積も削減。
- センサーを持つあらゆる製品で利用可能。
開発の背景・課題
製品の評価・検証自動化はAV機器やソフトウェアサービスなどの領域では進んできました。しかし、白物家電やBtoB領域の製品については、まだまだ人の手によるアナログで評価・検証が行われているケースが多数。数千項目にも及ぶテストを、テスト環境の構築から手作業で行っているため膨大な作業時間がかかり、また、検証ノウハウが属人的になってしまったり、検証履歴が煩雑な状態で残ってしまったりということも起きています。昨今、IoT化の波もあって様々な製品が多機能化・複雑化。それにともない、評価・検証プロセスも複雑化の一途。現状の人手に頼った評価・検証プロセスには限界が来つつあると考えられています。
ソリューション
そうした製造現場にある課題を解決するため、私たちのプロジェクトが開発したのがFPGA I/Fボードを搭載した「評価・検証自動化ツール」です。私たちは2001年からパナソニック製品の評価・検証を担ってきました。その過程でAV機器を中心とした製品の評価・検証自動化を推進し、ノウハウを蓄積してきました。それをもとに、センサーを持つあらゆる製品の評価・検証を自動化するソリューションを確立したのです。
従来のやり方では、手作業で複数の環境(温度、湿度、異常検出など)を同時に設定・検証することは困難でしたが、自動化ツール利用により評価基板内の複数種類の状態変化を一度に再現することも可能になりました。
「評価・検証自動化ツール」のメリットは、大きく4点。
1.休日・昼夜を問わない稼働が可能なため、大幅な納期短縮が可能なこと。次に、2.標準化されたプロセスでテストを行えるため、“人”による品質のバラつきをなくせること。そして、3.テスト結果が履歴として残るため何らかの問題が起きた際、原因究明が比較的容易になり、テスト結果の自動判定も可能なこと。さらには、4.FPGA I/Fボードによって複数のツールが1つになるため、低コストで増版・改版が可能で装置面積も大幅に削減できます。
【デモの説明】温度センサー付きFAN(右)は30℃を超えるとFANが回る機能を持ちます。温度センサー(サーミスタ)の代わりにFPGA I/Fボード(左)を接続し、電圧を変化させることで温度変化を作り出し、自在に温度変化できるようになりました。FPGA I/Fボードは「制御例」に記す様々な制御を同時に行うことができます。
自動化ツールを用いた制御例
制御対象 | 制御例 |
---|---|
アナログ | 温度/湿度/照度センサー |
デジタルパルス | ブザー周波数、LED点滅周期、モーター回転数、埃センサー、人感センサー |
デジタル | LED状態確認、右端/左端センサー、緊急SW、ドア開閉 |
リモコン | 受信データをPCに保存、シナリオから送信 |
シリアル(UART) |
・製品基板内部データの参照/合否判定 ・製品基板内部データの設定 ・サブ基板の代わりに通信 |
シリアル(I2C) | 各種センサーの設定 |
カメラ | 液晶やLEDの写真/動画撮影 |
OCR | 液晶の表示文字を読取 |
その他通信 | ETHER、WLAN経由でのコマンド送受信 |
*経済産業省 平成30年商品分類表より引用
製品例
分類 | 製品 |
---|---|
金属製品 | 温風・温水暖房装置 |
はん用機械 | エレベータ、エスカレータ、温室調整装置 |
生産用機械 | 農業用機械、建設用機械、ロボット |
業務用機械 | 複写機、自動販売機、遊戯用機械 |
電気機械 | 厨房機器、空調・住宅関連機器、医療衛生関連機器、電気照明器具、蓄電池、医療用装置 |
情報通信機械 | テレビ、ビデオ、音響、PC |
輸送用機械 | 自転車、自動車、鉄道、船舶、航空機 |
*経済産業省 平成30年商品分類表より引用
成果・今後の展望
「評価・検証自動化ツール」の過去の導入実績では、評価・検証の作業工数約50%削減、装置面積85%削減といった成果が生まれています。今、あらゆる領域のあらゆる製品が多機能化・複雑化しています。それに対し品質を確保していくためには、自動化ツールの役割は本当に大きいと思っています。自動化ツールの存在をお伝えすると、強い関心を持っていただけるお客様も非常に多く、ツールへの期待の大きさを実感します。
「評価・検証自動化ツール」は、AV機器や家電のみならず、エレベータ/エスカレータ、農業用/建設用機械、ロボット、自動販売機、遊戯用機械、厨房機器、空調・住宅関連機器、医療関連機器、自転車、自動車、鉄道、船舶、航空機など、センサーを持つ製品全般に活用いただけますので、今後ますます様々な事業現場に貢献していけたらと考えています。