稚内空港における除雪車両の自動運転化実証実験
モビリティ
プロジェクト概要
近年人材不足が顕著である降雪空港における除雪作業の省人化・自動化を目的とした実証実験プロジェクト。北海道エアポート様をはじめとするコンソーシアムに参画し、除雪車両の自動運転制御ソフトウェア開発を担当した。
顧客:北海道エアポート様
プロジェクト期間 : 10か月(実証実験フェーズ)
プロジェクトメンバー
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プロジェクトリーダーK.H
プリンシパルスペシャリスト
入社27年目 -
自動走行制御開発担当・チューニング担当S.G
入社25年目
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車両位置情報取得関連開発担当M.Y
入社13年目
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自動走行制御開発担当H.H
入社5年目
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営業T.O
入社9年目※キャリア入社
※2026年5月時点
プロジェクト背景
降雪空港における除雪作業は、空港の定時運行を維持するうえで欠かせない業務です。しかし近年は、除雪オペレータの高齢化や人口減少による人材不足が深刻化しており、省人化・自動化への対応が大きな課題となっていました。
北海道内7空港を運営する北海道エアポート様では、この課題に対して除雪車の自動運転化に取り組もうとされていましたが、開発知見や予算確保の面で課題を抱えていました。特に、空港運営では設備維持が中心となるため、新規開発投資の考え方や体制づくり自体が大きなテーマとなっていました。
そこで、北海道エアポート様や日本工営株式会社様をはじめとして、通信・車両制御・システム開発など、それぞれ異なる強みを持つ企業が集まり、コンソーシアムを構築し、そこに当社も参画しました。
プロジェクト概要
本プロジェクトは、降雪空港における除雪車両の自動運転化を目指した実証実験です。北海道エアポート様を中心に、通信・車両制御・システム開発など、それぞれ異なる技術を持つ企業でコンソーシアムを構築し、総務省事業(令和7年度『地域社会DX推進パッケージ事業』)等※1に採択されたことでスタートしました。
コンソーシアムには、NTTドコモビジネス株式会社(旧NTTコミュニケーションズ株式会社)、北海道エアポート株式会社、ID&E ホールディングス株式会社傘下の日本工営株式会社、当社親会社であるパーソルクロステクノロジー株式会社、ドコモ・テクノロジ株式会社参画しており、各社の専門技術を持ち寄りながらプロジェクトを推進しています。
実証実験では、主に以下3つのテーマについて検証を行いました。
(1)空港除雪車両の自動走行化
(2)遠隔監視システムおよび通信環境の構築
(3)運用体制の検討
その中で当社は、除雪車両の自動運転制御ソフトウェア開発を担当しました。
現在、空港除雪の自動化は2030年頃の社会実装を目指しており、本実証実験はその第一歩となる取り組みです。今後は、走行位置精度の向上や、熟練オペレーターのノウハウの自動化など、さらなる技術課題への対応を進めていきます。
※1 地域社会DX推進パッケージ事業 https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000436.html
当社に求められていた役割を教えてください
北海道エアポート様では、除雪車両の自動運転化に取り組みたいという構想はあったものの、開発ノウハウや予算確保の面で課題を抱えていました。そのため当社には、自動運転制御に関する技術支援だけでなく、実証実験を成立させるための現実的な開発推進も期待されていました。
本プロジェクトでは、技術面・予算面を含めた実証スキームの構築を進める中で、当社は主に除雪車両の自動運転制御および遠隔監視機能の実装を担当しました。
特に、自動運転可能な車両制御ソフトウェアの開発については、単なる実証実験で終わるのではなく、将来的な社会実装まで見据えた提案や対応力が求められていました。実際にコンペでは複数社が参加していましたが、実証実験後の保守・運用やカスタマーサポートまで含めて長期的に伴奏できる点を評価いただき、当社が選定されたと感じています。現在も北海道エアポート様と連携しながら、社会実装を見据えた運用や投資回収のあり方について継続的に検討を進めています。
当社の開発担当領域について詳細を教えてください
当社では、追加センサやPC部分など、自動運転の制御ソフトウェア部分の開発・実装を担当しました。
具体的には、車両ルーフ上のGNSSアンテナやIMU内蔵型GNSS受信機を用いた位置情報取得と、その位置情報を用いた自動運転制御の開発・実装を行いました。
業界や商材ならではのエピソードを教えてください
車両メーカーは車両情報を基本的に開示しないため、車両のバイワイヤ化を担当したパーソルクロステクノロジーとともに、多くの部分をリバースエンジニアリング(※)によって進めた点です。実際に自分たちで車両を分解・調査し、「こうすれば実現できるはずだ」と試行錯誤しながら開発を進めていきました。
※リバースエンジニアリング(逆行工学)とは、完成した製品(機械、部品、ソフトウェアなど)を分解、調査、解析し、その構造、仕組み、機能、ソースコードなどを明らかにする技術的プロセスです。通常とは逆の「完成品→設計図」という手順で、技術ノウハウの習得や互換性のある製品開発、製品の改良に活用されます。
当社で多く担当している、要件定義から設計・開発を進める一般的なプロジェクトとはプロセスが大きく異なり、思うように開発へ反映できない場面もありました。しかし、自分たちでリバースエンジニアリングへ挑戦していくことは、大きな学びにもなりました。
当社内でも、車両制御に詳しいメンバーと、ロボットの自律走行に強みを持つメンバーがアサインされており、それぞれの知見を掛け合わせられたことが、リバースエンジニアリングやその先の実証実験成功につながったと感じています。
また、実証実験は栃木県内の車両走行試験場で実施しました。稚内にあった実験車両を現地まで運搬し、装置取り付けや実証実験を行いました。ソフトウェアエンジニアでありながら、屋外で油まみれになって開発作業を行ったことは、この業界ならではの経験だったと思います。
さらに、今回はコンソーシアム体制でのプロジェクトだったため、各社ごとに目的や持ち帰りたい成果が異なっていました。例えば、NTTドコモビジネス様はローカル5Gの社会実装に向けた有効性検証を目的としていました。通常であれば顧客要望を中心に進めますが、本プロジェクトでは全企業がWin-Winになるよう、各社との調整や意思疎通が必要となり、普段のプロジェクト以上にコミュニケーションに時間をかけながら推進していきました。特に営業面では、日本工営様、パーソルクロステクノロジー様と連携しながら2024年度の事前開発を実施し、2025年度にNTTドコモビジネス様も交えて総務省に開発予算を申請するまで、複数の企業連携を構築したこともこのプロジェクトならではだったと思います。
プロジェクトを進めるなかで、直面した壁はありましたか?
実機を使った実証実験までに1.5か月しかなく、その短期間で自動運転制御部分の開発を行わなければならなかったことが大きな壁でした。
実証実験という性質上、1年以内に成果を出す必要があり、全体スケジュールから逆算すると、当社の開発期間は1.5か月程度しか確保できませんでした。本来であれば、この部分だけでも半年程度の開発期間が必要になる内容でした。
さらに、前工程の遅延もあり、実際に車両を使用して開発・検証できた期間は実質2週間ぐらいほどしかありませんでした。
北海道エアポート様へ開発進捗を公開するタイミングも決まっていましたが、実はその3日前まで、除雪車が想定通りに走行できていませんでした。
当初は、指定ルート上の目標地点に対して車両を制御するアルゴリズムを採用しており、事前シミュレーションでは問題なく動作していました。しかし、実機では車両がまっすぐ走行せず、別のアルゴリズムを採用することを決意しました。
最終的には、当初のアルゴリズムと新たなアルゴリズムを組み合わせることで、実証実験時に無事自動走行を実現させることができました。
「この方法がうまくいかなければ次はこちらを試そう」というサブプランも並行して検討しながら、直前までメンバー全員で開発を進めましたが、最後まで手を動かしてくれたソフトウェアエンジニアたちのおかげで間に合わせることができ、実証実験当日は非常に安心したことを覚えています。
このプロジェクトでやりがいを感じた点を教えてください
今回のプロジェクトはコンソーシアム体制だったため、各企業ごとに実現したいことや目的が異なる中で、全体最適を意識しながら各種調整を行う必要がありました。大変な部分もありましたが、プロジェクトを通じて企業同士の横のつながりができたことは大きな成果だったと感じています。実際に、このプロジェクトをきっかけに別案件で相談し合える関係性が生まれたり、案件紹介につながったりすることもありました。お互いに不足している技術を補完し合える関係性を築けたことは、長年エンジニア経験を続けてきた中でも非常に貴重な経験だったと思います。
また、日本初の取り組みや社会課題解決につながるプロジェクトということもあり、モチベーション高く取り組めたメンバーも多かったと思います。
個人的には、現場対応で栃木へ行く機会も多く、餃子を楽しみにしながら開発を進めていたことも印象に残っています(笑)。結果として、この取り組みが社内にも良い影響を与え、新入社員向けの紹介事例として取り上げられるなど、会社全体への波及効果にもつながっていると感じています。
今回のプロジェクトで、正直しんどかった!と思う点を教えてください
稚内空港での開発作業は、空港営業時間外の深夜0時~2時頃に行うことも多く、寒さや天候の厳しさは大変でした。ただ、そのような環境での開発は普段なかなか経験できるものではなく、「このプロジェクトだからこそできる経験」と前向きに捉えながら取り組むことができました。
パーソルAVCテクノロジーならでは!と感じる点はありましたか?
今回はコンソーシアム体制でのプロジェクトだったため、各社ごとにバックグラウンドやプロジェクトの進め方、コミュニケーションスタイル、技術レベルなどに違いがありました。そのような環境の中でも、プロジェクトメンバーは大きく混乱することなく、スムーズにプロジェクトを推進できていたと感じています。これは、当社エンジニアが持つコミュニケーション力や技術力の高さがあったからこそだと思いますし、「これまで積み重ねてきたことは間違ってなかった」と、各メンバーの自信にもつながったと感じています。
お客様からはどのようなお声をいただきましたか?
顧客満足アンケートでは、5点満点中ほぼすべての項目で4点以上の評価をいただき、満足いただけたものと感じています。
また前述の通り、コンソーシアム内でも信頼関係が構築することができ、その後の案件相談や連携にもつながっています。
チームとして成長した点を教えてください
今回の実証実験には、北海道エアポート様、NTTドコモビジネス様、日本工営株式会社様、パーソルクロステクノロジー株式会社など、多くの企業が参加していました。そうした中で、それぞれの立場や目的を理解しながら、全体最適を意識してプロジェクト推進することの難しさと重要さを学ぶことができました。
また日本の除雪について調査を進める中で、北海道開発局様が推進する「i-snowプロジェクト」への参画や、除雪車の架装メーカー様との関わりなど、新たな業界・技術との設定も広がりました。
今回の案件では、「除雪車両を自動化したい」というお客様の要望に対して、解決方法を一緒に考え、Win-Winな関係を築きながらプロジェクトを進めることができました。
空港除雪の省人化という社会課題に対し、私たちの技術力を活かして価値を提供できたことは、大きなやりがいだったと感じています。また、このような開発を進めるうえで特別なスキルだけが重要なのではなく、「お客様を理解しようとする姿勢」や「課題解決に向き合う熱量」が非常に大切だと実感しました。
生成AIによって簡単に“正解らしいもの”へたどり着ける時代になっていますが、実際に自分で考え、動き、自分の言葉で説明できることには大きな価値があると思います。実際に手を動かし、その結果に対してフィードバックが返ってくることは、エンジニアとして大きな面白さでもあります。
現在の技術では、社会課題に対して費用対効果の面で難しさが残る部分もあります。しかし、「難しいからやらない」のでなく、「今ある技術で何ができるか」を考え続けることが、エンジニアとして重要だと感じています。
本プロジェクトの今後の展望を教えてください
現在、空港除雪では毎晩約200名規模で作業が行われていますが、将来的には人員が減少しても、現在と同等の運用を維持できるよう支援してくことを目指しています。特に滑走路の除雪は、決められたルートを繰り返し走行する作業が多いため、自動化との相性が良い領域だと考えています。
今回の実証実験では、プラウ車両(雪を取り除くタイプの除雪車両)の自動運転に取り組みましたが、現在は次のステップとして、スイーパー車両(溝に入り込んだ雪を飛ばすタイプの除雪車両)の自動運転にも取り組んでいます。
また、本プロジェクトを通じて、お客様やパートナー企業とのつながりも広がっており、今後の事業展開にも貢献すると信じています。
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